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身近な冬鳥アオジが森林サイトで激減
北海道の林や本州の山地で繁殖する。オスは頭と頬が緑灰色で目先から嘴の付け根は黒味が強い。翼に2本の淡色帯がある。
生態系の異変に気付くためには「長い間、多くの地点で、同じ方法で見る」ことが重要です。自然の健康診断「モニタリングサイト1000」では、陸から海まで8タイプの生態系を対象に、全国1,000か所以上の調査地点(サイト)でモニタリングを続けています。今回は日本野鳥の会が担当する森林・草原サイトの一般サイトでのこれまでの結果からアオジの減少について報告します。
アオジの個体数は15年で半減?!
アオジ(Emberiza personata)は北海道の林や本州の標高の高い明るい林などで繁殖し、秋から春の越冬期は本州以南の山地から低地の林や林縁、薮などで見られます(フィールドガイド日本の野鳥 増補改訂新版)。越冬期の本州以南では、都市近郊でも緑地のある公園や庭、薮のある林、ヨシ原などでよく見かけ、個体数も多く感じるわりと身近な種です。小群で見かけることもあります。薮やヨシ原では姿が見えないことも多いですが、「ヂッ」という地鳴きはよく聞くことと思います。
越冬期の森林サイトのアオジの出現率(ある種の出現サイト数÷調査サイト数×100)は、毎年概ね15~20位付近に位置しています。近年、越冬期調査をしていて、よくいる種だと思っていたアオジがあまり記録されなく、個体数が少なくなっているのではないかと感じていました。
そこで、アオジの出現率の経年変化(図1)と、サイトあたりの平均個体数の経年変化(図2)を作図してみました。
出現率の経年変化では、当初からみると徐々に減少していることがわかり、なんと個体数では15年で約半数に激減していることがわかりました。
「なんだアオジか⤵(残念)」と思うくらい身近でありふれた鳥が、ふと気づくと激減しているというのは、ちょっと衝撃的な状況ではないでしょうか。
アオジ減少の原因

メスの背は褐色だが、腹部は黄色(越冬期)
減少の要因として考えられることは、ウグイスの減少と同じように、シカの食害による下層植生の減少により、アオジの生息環境が減少した可能性があります。または、林の遷移が徐々に進み、成熟した森林環境に変化し、薮や林縁環境が減っているからかもしれません。
今回のアオジのように、徐々に減少している種は、毎年モニタリングしていてもなかなか減少していることに気づかないかもしれません。ある程度の時間がたって、ふと、減少している、と気づかされます。2025年3月、モニタリングサイト1000の各生態系でとりまとめ報告書が公開されましたが、調査を継続することと一定期間でのとりまとめというのは大事なことだとわかります。今後のアオジの出現率や個体数の変化に注視していきたいと思います。
モニタリングサイト1000 陸生鳥類調査 情報 2025年 9月号 Vol.17 No.1(2.16MB/PDF)より
文/自然保護室 奴賀俊光
写真/奴賀俊光・井上瑞穂









